つきなみレポート

統計とグラフで知る社会と日常のこと。

コロナ禍における転職者 若者の転職者数は減少したがミドルクラスには大きな影響なしか

結論

・2020年以降、転職者数・転職者数比率は減少した。

・年代別では特に34歳以下の転職者比率の減少が顕著であった一方、35歳以上についてはそこまで大きな変動は見られなかった。

 

総務省統計局の労働力調査をもとに資料を作成しています。データソースは最後に記載しています。

就業者数の状況

 こちらにコロナ禍の状況をまとめたサイトがありますが、本ページでもコロナショックの就業者数の推移について簡単に確認します。

新型コロナが雇用・就業・失業に与える影響(新型コロナウイルス感染症関連情報)|労働政策研究・研修機構(JILPT)

https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/covid-19/index.html

<図1 就業者数>

f:id:kitchenobake:20220313195411p:plain

 2008年リーマンショック以降就業者数は落ち込みましたが2013~2019年までは回復傾向にありました。新型コロナウイルスの影響が日本で広がり始めた2020年以降は就業者数が落ち込んだものの、リーマンショック時のような大きな減少はないようです。2021年の就業者は約6,657万人です。

 それでも2020年は前年と比較して就業者が約48万人減少しました。正規の職員・従業員と非正規の職員・従業員の数を見てみます。

 

<図2 正規・非正規の従業員数 前年比>

f:id:kitchenobake:20220313195421p:plain

 コロナショック時は正規の従業員数は減少せず、前年比では増加しています。一方で大きく減少したのが非正規の職員・従業員数。こちらは2020年については前年比で75万人減少しています。2021年も非正規の従業員数の減少は続いています。

 リーマンショック以降2009年は正規/非正規共に数が減少し、その後非正規の数が増えていきました。コロナショック時は正規社員数は減少せず(むしろ増加幅は2019年を超えています。)、非正規が大きく減少したことが就業者数に影響を与えた可能性があります。コロナ禍で人との接触が減少した結果、パートやアルバイトで接客などを行っていたサービス業の非正規労働者数が減少しました。

 

小まとめ

・コロナ禍で就業者数は落ち込んだがリーマンショック時ほどではなかった。

・正規の従業員数は増加し、一方で非正規の従業員数は特に2020年は前年比で大きく落ち込んだ。

 

 

転職者の状況

コロナ禍の状況

 コロナ禍における就業者の状況を確認したところで、次に転職者の状況を確認します。「新入社員はすぐに辞めてしまう」など転職者のニュースはたびたび目にしますが、コロナ禍で転職市場は影響を受けたのでしょうか。

<図3 転職者数および転職者比率>

f:id:kitchenobake:20220313195433p:plain

※「転職者」とは,就業者のうち前職のある者で,過去1年間に離職を経験した者※「転職者比率(%)」=転職者数÷就業者数×100

足元2021年では転職者は288万人にまで減少し、転職者比率は4.3%にまで下がりました。リーマンショック後にも転職比率は下がっていますので、大きなショック後には転職比率は下がる傾向にあるのかもしれません。

 

<図4 年代別転職者比率推移>

f:id:kitchenobake:20220313195442p:plain

年代別に見ると34歳以下の転職者比率が急落しました。若手社員を含む25~34歳の転職比率は大きく減少しています。

35歳以上の転職者比率を見ると、もともと5%程度と少なかったのですがコロナショック以降で大きく減少している様子は見えません。若者の転職市場は大きく揺らぎましたが、35歳以上の管理職クラスを含むと思われる転職市場は影響を受けにくいのでしょうか。

 

<図5 年代別転職者比率 前年比 2016年以降>

f:id:kitchenobake:20220313195451p:plain

直近の数字を取り出してみると、2020年の転職者比率は34歳以下が前年比で‐14%と大きく下落しているのに対し、35~44歳は‐6%と減少率は半分以下です。45~54歳にいたっては+3%と増回している様子が見て取れます。

また45~54歳の転職者比率は2021年には‐14%と2020年の34歳以下並に転職者比率が下落しています。この層はまるで1年遅れてコロナ禍の影響を受けたようにも見えます。

 

小まとめ

・34歳以下の転職者比率はコロナ禍で大きく減少した。

・35~44歳の転職者比率は減少したものの、その幅は34歳以下の半分にも満たず、影響は限定的であったと考えられる。

・45~54歳の転職者比率はコロナ禍1年目の2020年には上昇し、自粛期間中にも流動性が高かった可能性がある。

 

 

男女間の状況

 続いて男女間の転職者数の状況を見ていきます。コロナ禍の転職者の状況で気になったのは45~54歳の転職者比率。他の層が軒並み転職を控えている中、この層だけは自粛期間1年目に転職者が増えました。その原因は女性の45~54歳の転職者比率にありました。

 

<図6 転職者数 男女別推移>

f:id:kitchenobake:20220313195501p:plain

前提として、足元では男性よりも女性の転職者数が高い状況が続いています。2005年頃、リーマンショックより前は転職者数における性差はほとんど見られませんでしたが、2014年以降はその差が(実数で)拡大しています。

2020年以降では、転職者数は男女ともに減少しているものの、女性の転職者数が多い状況は変わりません。2021年では男性約133万人、女性約156万人でその差は約23万人でした。

 

 続いては2020年に唯一転職者比率が上昇した年齢層、45~54歳の転職者比率の状況を男女別に確認します。

<図7 年代別転職者比率 前年比 男性>

f:id:kitchenobake:20220313195510p:plain

男性45~54歳の転職比率は2020年(前年比)では大きく変化ありませんでした。2021年には前年比プラスで成長しており、自粛ムードが続くコロナ禍2年目には男性45~54歳の転職市場は元に戻ったかの影響を受けます。また、男性35歳以上の2020年の転職者比率は前年比で見てほとんど変化なく、コロナ禍でも影響を受けにくかったと推定されます。

 

<図8 年代別転職者比率 前年比 女性>

f:id:kitchenobake:20220313195518p:plain

女性45~54歳の転職者比率前年比は2020年に大きく上昇し2021年に下落しています。年代別転職者比率に影響を与えたのは女性であったことがわかります。女性の35~44歳、55~64歳の転職者比率もコロナ禍で大きな変化はなく、これは男性と似た傾向です。

なぜ女性45~54歳の転職者比率だけが大きく動いたのでしょうか。

 

小まとめ

・女性45~54歳の転職者比率は2020年に前年比で唯一上昇した。

・男性の年齢別転職者比率は大きな動きがなかった。

 

以下、非正規率と職業別就業者数を男女別に確認しましたが、理由は明確にはわかりませんでした。

 

 転職者数は男性<女性の状況が続いていることはお示しした通りですが、その内容を年齢別により詳細に確認します。

<図9 転職者比率推移 男性>

f:id:kitchenobake:20220313195528p:plain

<図10 転職者比率推移 女性>

f:id:kitchenobake:20220313195537p:plain

 全体として女性の転職者比率のほうが男性よりも高いですが、年齢が上がっていくにつれその差は縮小していくようです。

男性は34歳を超えると転職者比率が5%以下に落ちます。男性は34~65歳以上の転職者比率が非常に近くなります。この年齢を超えると「今の会社でやっていこう」と考える方が増えるのでしょうか。女性も年齢が高くなるほど転職者比率が下がっていく傾向は同じですが、男性に比べ減少度合いはなだらかです。

 

<図11 転職者比率の男女差 年代別>

f:id:kitchenobake:20220313195546p:plain

55歳以上になると男女間の転職者比率はほとんど変わらなくなります。

 

以降、2020年に女性45~54歳の転職者比率が前年比で増加した理由を男女の非正規率と職業に求められないか確認します。

 

<図12 男女別 非正規率推移>

f:id:kitchenobake:20220313195556p:plain

まず前提として男女間の非正規率を確認します。2002年から一貫して女性の非正規率が高い状況が続きます。男女間の非正規率の差は緩やかに減少しているようにも見えますが、それでも2021年の非正規率は、男性22%、女性54%と大きな差があります。

 

<図13 非正規比率の男女差 年齢別>

f:id:kitchenobake:20220313195605p:plain

上図は「女性の非正規率―男性の非正規率」を示したものですが、どの年代においても女性の非正規率のほうが男性よりも高いためグラフの数値はすべてプラスになっています。

 まず、34歳以下では男女間の非正規比率に差はないことがわかります。しかし34歳以下では女性転職者比率のほうが高いため、男性に比べて女性のほうが34歳以下では転職しがち、といえるかもしれません。

 続いて35歳以上の層ですが、これらの層は55~64>45~54>65~>35~44の順で女性の非正規率が男性より高くなっています。

 2020年に転職者比率が前年比で増加したのは女性45~54歳の層です。この層の非正規率が最も高ければ非正規の従業員が多かったため別の職場に移りやすかった、という仮説も考えられるのですが、実際に男女間の非正規率の差が最も大きいのは55~64歳の層でした。非正規率が高いため、ということが理由ではなさそうです。

 

小まとめ

・女性の非正規比率は男性に比べ3割近く高い。

・最も男女の非正規比率差が大きいのは55~64歳層。45~54歳層が突出しているわけではない。

 

 

続いては職業が関係していそうか確認します。ただし、こちらは年齢別の調査がなかったため女性45~54歳の層の就業業種を特的できず、おまけになります。

<図14 職業別就業者数 男女別 2021年>

f:id:kitchenobake:20220313195616p:plain

 まず男女差について確認します。性別により、どの職業に従事しているかについて大きな差が確認できました。建設、輸送、保安職業についている女性はほとんどいませんが男性は5%前後が当該職業に従事しており、男女差が大きくなっています。またサービス業、事務に従事している女性の比率は男性よりも多いです。なんと女性の28%が事務、18%がサービス職業についており、この2つの職業についている女性で46%を占めます。

 

<表1 職業別就業者数 男女別>

f:id:kitchenobake:20220313195626p:plain

f:id:kitchenobake:20220313195634p:plain

 残念ながら年代別の調査はなかったので女性45~54歳が偏ってどこかの職業に多く従事しているかどうかはわかりませんでした。

 

まとめ

 生活の様々な部分に影響を与えているコロナ禍。就業者数はやや減少しましたが、同時に転職者数も減少しました。ただし、転職者数の減少は特に34歳以下の若い世代に顕著に表れ、45歳以上の転職者数は比率で見ても大きく変動していません。もともと転職者数比率が高い34歳以下は転職を控えた方が多く、もともと転職者数比率がそこまで高くなかった35歳以上の転職市場にはそこまで大きな影響がなかったと考えられます。

 コロナ禍による自粛が始まった2020年、影響の大小はあるものの軒並み転職者数比率が下がる中、唯一プラス成長したのが女性45~54歳の層でした。非正規率の高さ、従事している職業の関係があるのかと思い確認しましたが本ページでは明確な答えが出せていません。

 

 

 

データソース

総務省統計局「統計局ホームページ/労働力調査 長期時系列データ」(閲覧日2022年3月)

https://www.stat.go.jp/data/roudou/longtime/03roudou.html#hyo_9

 

メモ:用語について

 統計の中で「雇用者」という言葉が出てきます。一般的には雇用者とは従業員を雇って会社を運営する人をイメージしますが、この統計では従業員やパートなどの被雇用者が雇用者に含まれます。総務省統計局のウェブサイトでの解説は以下のとおりです。

 

用語の解説

就業者:「従業者」と「休業者」を合わせたもの。

雇用者:会社,団体,官公庁又は自営業主や個人家庭に雇われて給料・賃金を得ている者及び会社,団体の役員。

 

総務省統計局「労働力調査 用語の解説」2018年5月11日改定https://www.stat.go.jp/data/roudou/definit.html

ちょっとややこしいので記載しています。

 

若い世代はお酒を飲まない-飲み会コミュニケーションはもう通用しない?

デートでお酒が入っていい雰囲気に。社会人は上司との飲み会で親睦を深める…。こんな考え方はもはや一般的ではなくなってきているかもしれません。コロナ禍で飲み会が無くなるその前から、飲酒をきっかけとしたコミュニケーションというのは難しくなっていたのではないでしょうか。政府統計より、国民の飲酒状況についてのデータをグラフ化していこうと思います。

 

<結論>

・そもそもお酒を飲めない人が3割。

・男性の4割、女性の6割で日常的に飲酒習慣が無い可能性。

・20代は日常的な飲酒習慣がない人が多く、週5日以上飲んでいる人たちは20代では5%と少数派。

 

 

飲酒の状況-男女の比較

日本人はお酒が飲めない体質の方も多い、というのは広く認知されてきている話です。まずはお酒を飲めないと回答した比率を男女別・年代別に見てみます。

<図 飲まない(飲めない)と回答した比率(男女年代別)>

f:id:kitchenobake:20210710113528p:plain

 20~24歳の男性の24%が、女性の37%がお酒を飲めないと回答した、とグラフを読みます。まずグラフを見て思うことは、飲めない方の比率が結構高い、ということではないでしょうか。50代以下で見ると、男性は約2割、女性は約4割がお酒を飲めないと回答しています。

 女性のほうがお酒を飲めないと回答した比率は高くなります。社会人が多い25~59歳では、約4割の女性がお酒を飲めないようです。もはや飲めないことは全く普通の事象といっていいでしょう。(適当ですが)日常的にカップラーメンを食べている比率と似ているかもしれません。男性も約2割がお酒を飲めないと回答しています。30名の部署であれば6名程度は飲めない方がいらっしゃるということです。

 

 続いては、飲めない方に加えて、飲めるけれどもほとんど飲まないと回答した方の合計グラフです。

<図 ほとんど飲まない、または飲まない(飲めない)と回答した比率>

f:id:kitchenobake:20210710113543p:plain

50代以下の平均では、実に男性の4割、女性の6割において日常的に飲酒習慣が無いと回答しています。特に若い世代ほど飲酒習慣が無い方が多く、20代は男性の5割、女性の6割に飲酒習慣がありません。つまり20代は半数以上に日常的な飲酒習慣がありません。

 

こうしてみると新人歓迎会や部署異動や送別会等、会社の行事で当然のように飲み会が選択されるのは不思議な気がします。毎回とは言わないまでもたまにはランチでノンアル開催があってもいいなと思います。

そして自分がもしアルコール飲料メーカーの商品開発担当者だったら…と考えてしまいます。時代の潮流かノンアル市場開拓が進んでいる背景はここにあるのかもしれません。

 

ところでほとんど飲まない=飲めるけれども敢えて飲まない、と回答した比率が高い世代はあるのでしょうか。

<図 ほとんど飲まないと回答した比率(男女年代別)>

f:id:kitchenobake:20210710113554p:plain

飲めるけども日常的には飲まないと回答した比率は特に20代で高いことがわかります。女性は20代より上の世代を見てもあまり大きな変化がなく、生活スタイルに飲酒を組み込まない層が2割程度存在し続けます。一方で男性の「飲めるけれども飲まない」比率は年代とともに若干低下していきます。お酒が趣味になってくる方も増えてくるのでしょうか。

アルコール飲料メーカーの気持ちになってみると、新規ターゲットとするのはこの「飲めるけれども飲まない」層でしょうか。ただいかんせん母数が少ないので、ノンアル市場に注力したほうがいいのかもしれません。

 

20代を中心にお酒離れが進む中、「毎日飲む」と回答した方の比率はどうでしょうか。

<図 毎日飲むと回答した比率(男女年代別)>

f:id:kitchenobake:20210710113604p:plain

20代では男女差はほとんど見られません。30代以降、「毎日飲む」と回答した男性の比率は増加傾向にありますが、女性は横ばい傾向です。年代が上がっていくにつれて男女の差は鮮明になります。男性は60代では約4割が毎日飲むと回答しています。男性には妊娠~授乳期など飲酒ができない期間がないので、男女の差が一定数開くのは不思議なことではありません。

またライフステージが変わる方が多いと想定される60代以降、「毎日飲む」と回答した男性の比率は若干の増加を見せる一方で女性は若干減少しています。

 

男性

f:id:kitchenobake:20210710113615p:plain

女性

 

f:id:kitchenobake:20210710113626p:plain

 

飲酒の状況-年代の差

まずは全体の状況を見てみます。要素を集約すると傾向が強く出てきます。

<図>

f:id:kitchenobake:20210710113638p:plain

 全世代でお酒を飲めないと回答した比率が最多です。ほとんど飲まない人も多く、約2割を占めるため、日常的に飲酒しない方は約半数に上ります。

 一方で週7~5日と高頻度で飲酒をすると回答した比率は20代では少数派ですが50~60代では約3割で年代とともに上昇する傾向にあります。

 

若い人は日常的にお酒を飲まない現状が明らかです。敢えて飲まない(=ほとんど飲まない)方も他の世代に比べると多いです。特に週5日以上飲んでいる人たちは20代では5%にとどまりますので少数派と考えたほうがいいでしょう。 

f:id:kitchenobake:20210710113711p:plain

 

男女間、年代間で飲酒の状況に差があることが分かった今、会社における状況を少しだけ想像してみます。

f:id:kitchenobake:20210710113657p:plain

 50代前半の男性上司のもとに20代後半の部下が付いたとします。

50代前半の男性は31%が毎日飲酒しています。週1回は飲酒する割合は58%です。自分の飲酒経験も相まって半数以上が「飲酒は普通のこと」と考えている可能性が高いでしょう。

ところが20代の部下たちの行動は全く違うことが想定されます。20代後半の女性は44%がお酒を飲めず、男性も24%がお酒を飲めません。

この場合、特に男性上司と女性部下の間で飲酒に対する考え方がずれている可能性が高く、上司がねぎらいのつもりで誘った飲み会が部下にとっては負担になるケースがあります。お酒が飲めない方が半数もいる世代なのです。ありがたいけれど困ったなと部下に思われるケースは決して少なくはないでしょう。

 

 事前にお酒が飲めるかどうかという調査をしなければ、下手をするとパワハラアルハラになりえます。「今日はちょっと頑張ったし飲みに行くか!」という誘いはコロナ禍後も別の意味で慎重になるべきかもしれません。

 

<表 飲酒の状況 総計> 

f:id:kitchenobake:20210710113720p:plain

 

<データ>

e-Stat

国民生活基礎調査/令和元年国民生活基礎調査/健康/全国編/年次

 

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450061&tstat=000001141126&cycle=7&tclass1=000001141142&tclass2=000001142126

大学進学率に見る男女間の教育格差-もはや格差はなくなった?

秋が深まってきました。受験生は大学入試に向けて模試が増えてくる季節でしょうか。

今回は日本における大学進学率の男女差と、現役進学率について見てみました。一昔前は教育の場でも明らかに男女間での差が見られ、女子の大学進学率は低いといわれていましたが状況は変わったのでしょうか。

 結論からみますと、大学・短大進学率において男女間の差はほとんどなくなり、浪人へのインセンティブは下がってきている可能性があるということが言えそうです。ただし浪人比率や高偏差値への進学は男子学生のほうが多く、男女間の差は完全になくなったわけではなさそうです。

 <目次>

高等教育機関への男女別進学率

初めに大学・短大への進学率を男女別に見てみます。青線が男子、オレンジ線が女子、男女間の進学率(男子進学率ー女子進学率)の差がグレーのバーです。

<図 大学・短期大学への進学率>

f:id:kitchenobake:20201030211106p:plain

※過年度高卒者等(浪人生など)を含む

 

まず驚いたことは、近年はほとんど男女間の進学率に差が見られなくなってきているという事実です。1960年は男子進学率14.9%、女子進学率5.5%でした。この時代、大学に進学する女子は本当に少なかったようです。

戦後、男女ともに進学率は急上昇します。そして90年代には一時女子進学率が男子進学率を上回りました。2019年は男子進学率57.6%、女子進学率58.7%となりなんと女子進学率が男子進学率を超える結果となっています。この結果からみると、高等教育を受けるにあたっての男女間の格差というものはほとんどなくなったといっていいかもしれません。

 

次は短期大学を除いた大学への進学率です。こちらも男女別に進学率を確認します。

<図 大学への進学率>

f:id:kitchenobake:20201030211119p:plain

※過年度高卒者等(浪人生など)を含む

 

先ほどの短期大学と合わせたグラフよりは男女間の差は広がっていますが、これでも2019年は男子進学率56.6%、女子進学率50.7%となっており両者の差は5.9%にまで縮んでいます。1970年代は両社の差が約30%近くあったことを考えると大きく前進したといえそうです。また大学進学率は一貫して男子のほうが高く、過去男女間の進学率が逆転したことがないのも特徴です。

 

大学に進学しやすい状況が到来した

なぜ大学進学率は上昇したのでしょうか。教育に対する理解が普及したこともあるかと思いますが、単純に大学数が増加したことも原因ではないでしょうか。

<図 18歳人口と大学数>

f:id:kitchenobake:20201030211131p:plain

日本の少子化が進んでいることは周知の事実ですが、18歳人口も1990年代後半から減少をはじめ、2010年代には横ばい傾向になっています。

一方で大学数(短大数は除いています)は最近でこそ横ばい傾向であるものの増加の一途をたどっていました。2020年の大学数は795校(速報値)となっています。18歳人口は減少しているのに大学数は増加傾向。そもそも大学数が少なかった時代から比べるとかなり大学進学がしやすい時代がやってきたのではないでしょうか。

ちなみに記載はしていませんが短期大学数は減少しています。

 

18歳人口1人当たりの大学数が増加するに伴い、大学への進学率も綺麗に上昇しています。

<図 18歳1人当たりの大学数>

f:id:kitchenobake:20201031060439p:plain

学校数が増加したことが進学率の押し上げに貢献したといえそうです。

 

現役進学と浪人生

さて続いては進学者の内容を現役合格率と浪人生を含む進学率です。薄い緑が現役進学率、濃い緑が過年度高卒者等(浪人生など)を含む進学率です。

<図 現役進学率と浪人含む進学率>

f:id:kitchenobake:20201031060454p:plain

現役進学率と浪人生を含む進学率は年々その差がなくなっているようです。最近は現役で合格できる大学に進学することが増えているのでしょうか。「超安全志向」といわれる大学選びを行う人が増え、現役で合格できる大学に進学する人も増えているといった報道も耳にします。

news.yahoo.co.jp

 

浪人してまで知名度の高い大学に進学するインセンティブは最近では薄くなってきているのかもしれません。

 

現役進学率と浪人生含む進学率についてもう少し見てみます。こちらは進学者率について、浪人生を含む進学率と現役進学率の差分を男女別にみたグラフです。

<図 現役進学率と浪人含む進学率の差>

f:id:kitchenobake:20201031060556p:plain
本当であれば高等教育機関進学者の現役・浪人の進学者数から算出したかったのですがいい情報源が見つけられませんでした…。一般的には浪人生を含む進学率のほうが高く出るので、これと現役進学率の差を出しています。

まず男女ともに現役進学率と浪人含む進学率の差は縮んできています。男子については2000年に大きく差が縮み、以降その傾向が継続。2019年は5.9の差となっています。女子についてはもともとほとんど差がありませんでした。

こうしてみると、男女ともに「浪人してまで行きたい大学がない/浪人したいと思わない」と考える人が増え現役進学率と浪人含む進学率の差が減ったとも考えられます。

また「大学・短期大学進学率」という枠組みで見るとほとんど生じていなかった男女差について、こちらでは傾向に違いがあるようです。もともと女子は浪人を嫌がる傾向があったのかもしれません。

 

ところでなぜ女子の進学率の差はマイナスになっているところがあるのか、浪人含む進学率より現役進学率のほうが高く出ているとはどういうことか、という点についてわかる範囲で見てみます。 

過年度高卒者等を含む進学率

そもそも、(よいデータを見つけられなかったために)現役進学率と浪人生含む進学率は類似しているデータを用いているものの、分母も分子も微妙に違う数字を持ってきています。

<表1 現役進学率と浪人含む進学率>

f:id:kitchenobake:20201031060526p:plain

※単位は%

オレンジ色部分では現役進学率のほうが高い数字となっています。

 e-stat掲載の学校基本調査年次統計における注釈は以下のとおりです。

大学・短期大学等への現役進学率:各年3月の高等学校及び中等教育学校後期課程本科卒業者のうち,大学の学部・通信教育部・別科,短期大学の本科・通信教育部・別科及び高等学校等の専攻科に進学した者(就職進学した者を含む。)の占める比率。

大学(学部)・短期大学(本科)への進学率(過年度高卒者等を含む):大学学部・短期大学本科入学者数(過年度高卒者等を含む。)を3年前の中学校卒業者及び中等教育学校前期課程修了者数で除した比率。

 ※太字は筆者

 つまりとてもざっくりと見てみますと、2019年の場合、

現役進学率=大学・短期大学・その他の進学者数/2019年3月の高校・中高一貫校の卒業生

浪人含む進学率=大学・短期大学の入学者数/2016年の中学・中間一貫校の中学部卒業者

となります。

分子については現役進学率のほうが広く補足しており「とりあえず進学していたらどこでもOK」という立場に対し浪人含む進学率は「大学化短期大学の本科に進んだ人だけ採用(通信制とかはダメ)」という立場をとります。

また分母についても若干立場が変わっており、現役進学率は「春に卒業した高校生の人数」であるのに対し浪人含む進学率は「3年前の中学卒業時の人数」を利用しています。

 

おそらくここら辺の理由により現役進学率のほうが高く出る年があるのではと思っています。本来であればもっといい数字(同年の大学入学者数に占める現役合格者と過年度合格者の比率)を比較に使いたかったのですが無念です。

 

男女別東大の合格者数

男女ともに「大学・短大」への進学率でみるとほとんど差がない(むしろ女子の進学率が高い年もある)ことがわかりました。しかし、大学ではなんだか女子のほうが少なかった気がする…という方もいらっしゃるはずです。

さて大学への進学率は男子のほうが少し多い程度でしたがどの大学でも男女比率は等しいのでしょうか。その答えはNOです。高偏差値の大学では依然として男子生徒の比率が高いです。

 

日本の有名大学東京大学を例に見てみます。ちなみに東京大学は浪人合格者比率が約3割とかなり浪人比率の高い大学です。そして浪人生に男子学生が多いという事実もあってか、東大の合格者数は男子のほうが多い結果となっています。

<表2 2020年度東京大学合格者数等>

f:id:kitchenobake:20201031060621p:plain

出典:Y-SAPIX & SAPIX & 代々木ゼミナール."2020東大入試状況「男女別割合」".東大合格を目指す受験生のための総合サイト東大研究室.(閲覧日2020/10/30). https://juken.y-sapix.com/articles/11041.html 

 

男女の合格者の差があるのは同人数が受験しているのにもかかわらず男子生徒の合格率が高いせいでしょうか。そんなことはないようです。

<図 2020年度/2019年度男女別合格率(東京大学)>

f:id:kitchenobake:20201031060634p:plain

出典:Y-SAPIX & SAPIX & 代々木ゼミナール."2020東大入試状況「男女別割合」".東大合格を目指す受験生のための総合サイト東大研究室.(閲覧日2020/10/30). https://juken.y-sapix.com/articles/11041.html 

このサイトで初めて知ったのですが、一般入試の合格比率は男子生徒が高いということも驚きました。

 ちなみに有名大学の女子比率についてはこちらの記事に記載があります。偏差値の高い大学ではやはり男子学生のほうが多いという結果が出ています。

https://bunshun.jp/articles/-/12201

 

まとめと感じたこと

大学数が増え大学進学が容易になったためか、進学率で見ると男女間の差はほぼなくなったように見える今日この頃。ただ、浪人の状況や偏差値の高い大学は男子生徒のほうが多いようです。

なぜ女子は男子に比べて浪人する人も少なく、また偏差値の高い大学へ行く人が少ないのでしょうか。

田舎ですと実際「女の子なんだからそんなに頑張って勉強しなくても」「女なのに浪人するの?(珍しいね)」という言葉をナチュラルに浴びせてくる人がいます。また親が女子の進学に対し「大学へ行くのは賛成だけどそこまで高い学歴は求めていない」スタンスだと説得に労力がかかります。表には出ないけれど人々の無意識レベルの思い込みが影響を与えている可能性があります。

性別による優秀さには差がないという前提で考えると、周囲のアンコンシャスバイアスといった環境面よりも女子高校生の考え方の変化もあるかもしれません。女子高生は浪人してまで大学に行く意味が感じないのかもしれません。彼女たちが思い描く人生には「学歴」が大きな意味をなさなくなっている可能性もあります。

そしてこれは男子高校生にも一部同じことが言えそうです。現役進学率と浪人含む進学率とが非常に近い数字になってきたということは、男子学生にとっても「もう1年かけてでも偏差値の高い大学へ行く」ことのメリットが減ってきていると言えそうです。(そもそも大学数が少ないので)頑張らなくては大学に入れない時代から、特にえり好みしなければ大卒資格が取れる時代になったといえるかもしれません。

 

・データ

進学率

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&query=%E9%80%B2%E5%AD%A6&layout=dataset&toukei=00400001&tstat=000001011528&stat_infid=000031852304&metadata=1&data=1 

学校数

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00400001&tstat=000001011528&cycle=0&tclass1=000001021812

・補足
男女別の現役・浪人の差について触れているサイトもありました。

出典:https://www.kalligram.com/column/ronin/girl

同年度(平成30年)の男女あわせた、全国の受験生の現浪の割合がこちらです。

現役・・・79%

浪人・・・21%

こちらもe-statから抽出した公式データです。

 

探したのですがこのデータが見つかりませんでした。とても残念です。。。

 

月曜日の感染者発表数は少ないし20代の新規感染者数は増えている【Covid-19】

まだまだ落ち着く様子のない新型コロナウイルス感染症。日々ニュースに触れていると、肌感覚で月曜日は感染者数が少なく、週末にかけて人数が増えていく気がします。その感覚は正しいのか調べてみました。また、春時点に比べ「20代30代の若者の感染が増加」というニュースもよく耳にするようになりました。他の年代に比べ本当に増加しているのかも気になるところです。

今回はまず改めて新規陽性患者発表数(毎日「東京では新たにXX名の感染」とニュースになる数字です。)を確認し、曜日ごとの発表者数に差があるのか確認します。

次に年代ごとの感染者数を確認し、各年代における新規陽性者比率が異なるのかを確認しています。 

 

・結論

月曜日は週末に比べ新規陽性者発表数が有意に少ない。

最近は20代の感染者が「数でも比率でも」増加。

 

 

・データ

東京都 新型コロナウイルス陽性患者発表詳細

https://catalog.data.metro.tokyo.lg.jp/dataset/t000010d0000000068

※2020/10/15までのデータを集計

 

東京都の新規陽性者数

最初に東京都が発表している新型コロナウイルス新規陽性患者発表者数を日次で見てみます。専門家ではないのでいつからが第一波でいつからが第二波で…ということはわかりませんが、おおむね3月後半から5月にかけて1回目の波があり、8月ころからまた新規陽性患者数が増え始めたようです。

<図1 東京都 新規陽性者発表数>

f:id:kitchenobake:20201028112119p:plain

見慣れたグラフです。オレンジ色の線で新規陽性患者発表数の5日移動平均を示していますが、10月現在は感染者の増加傾向もなく横ばいといった状況でしょうか。

 

曜日ごとの新規陽性者発表数

東京で毎日ニュースに触れていると、「●日ぶりに100名を超える感染を確認」という記事を周期的に見かけると思います。なんとなく仕事始めの月曜日は少なくて週末にかけて感染者の発表数が増えるイメージでした。今回は本当に曜日によって発表される新規感染者数に差があるのか確認してみようと思います。

 

なぜ曜日によってばらつきが起こるのかはわかりませんが、個人的には病院が検体を検査する体制、また保健所のキャパの問題もあるのかなと思います。そうであれば、第一波の時の状況と8月以降の第二波の状況では検査を取り巻く環境も変わっていることが予想されます。ということで今回は新型コロナウイルスが広がり始めた2020/3/1からのデータと、第二波の期間を含む2020/7/1から2020/10/15までの状況を比べてみようと思います。

※10/15で区切ったのは特に意図がなく、ちょうどこの日にデータをダウンロードしたためです。

 

まずは7月から10月までの曜日別の感染者発表数の状況です。

<図2 東京都 新規陽性者発表数 曜日別平均値>

f:id:kitchenobake:20201028112140p:plain

各曜日の発表者数の平均値を青のバーで示しています。参考までに期間中の発表者数の平均値をオレンジの横線で示しています。肌感覚のとおり月曜日は発表者数が少ないことがわかります。水曜日当たりまでは比較的低水準ですが、木曜日からは平均値が上がります。毎週後半になると「コロナ感染者が増えた」という記事を目にする機会が増えますね。

曜日ごとの平均値が異なることはわかりましたが、これはただ偶然差が出ているだけなのでしょうか。そんなことはありませんでした。エクセルの便利な機能で「生じた差は偶然の差なのか、それとも偶然ではない差なのか」ということを調べられる機能があります。結果、月曜日は偶然ではない程度で発表者数が少なく、土曜日は偶然ではない程度で発表者数が多いことがわかりました。

 

データ数を増やし、新型コロナウイルスが広がり始めた2020/3/1からの状況をみても曜日ごとの傾向は変わりません。

<図3 東京都 新規陽性者発表数 曜日別平均値>

f:id:kitchenobake:20201028112201p:plain

やはり月曜日は少なく、金・土は発表者数が多い傾向にありました。その差も偶然ではないようです。医療機関や検査機関を取り巻く状況もこの半年で変化していると思うのですが、傾向は変わらず出ているようです。

今後は月曜日の感染者数のニュースを見ても「減ってきた!」と思わずに、「傾向通りだな」くらいに受け止めるべきだと思います。

 

 

東京都の年代別新規感染者数

過去のニュースを思い返してみると、4月の感染者は比較的高齢の方が多く、最近は20代30代といった若年層の感染が増えている…といった報道が多い気がします。本当に年代間で感染者の増減が見られるのでしょうか。そして最近は若者の感染が増えているのでしょうか。

 

日々発表される新規陽性者数を年代別に見たのがこちらです。

<図4 東京都 年代別新規陽性者発表数>

f:id:kitchenobake:20201028112214p:plain

20代はオレンジ色、30代はグレーですが確かに4月ころは新規陽性者数が少ないように見えます。外出自粛期間を経て、そこから徐々に20代の新規陽性者数が増えていっているように見えます。

 

続いて、1日の新規陽性者数に占める比率を年代別で見てみます。

<図5 東京都 新規陽性者における年代比率>

f:id:kitchenobake:20201028112225p:plain

3月はそもそも新規陽性者のデータが少ないのでガタガタしていますが、4月ころからは傾向が出てきています。7月ころは20代、30代の新規陽性者数が1日の新規陽性者数に占める割合が7割近くまで上がっている日もあります。特に20代の比率は最近でこそ落ち着いてきたものの、7月8月は高めに出ています。若者の感染者数が数字でも比率でも高まってきていましたので当時の報道は正しかったようです。

 

発表者内に占める年代比率は見てきたとおりですが、東京都の人口は全世代が均等なわけではありません。東京都の年代別人口に占める感染者の比率はどうなのでしょうか。

第一波を含む4月と第二波を含む9月の状況を比較してみます。

 

年代別人口に占める新規陽性者数の比率

・年代別人口データ

人口推計 10月1日現在人口 2019年

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200524&bunya_l=02&tstat=000000090001&cycle=7&year=20190&month=0&tclass1=000001011679&result_back=1

 

現在2019年10月1日の情報が最新でしたのでこちらを使います。1年古いものですが仕方ありません。また、人口推計は5歳階級であり上が「85歳以上」でくくられています。東京都の新規陽性患者発表数は85歳以上の内訳まであるのですが、人口推計に合わせて年代カテゴリを80代以上として集計します。

 

ではまず年代別新規陽性者数を4月と9月で比較してみます。

<図6 東京都 年代別新規陽性者数>

f:id:kitchenobake:20201028112237p:plain

9月には入ると40代以下は4月に比べて人数が増加したことがわかります。同時に、60代以上は新規陽性者の数で見ても4月より9月のほうが減少していることがわかります。これは大きな変化です。20代以上については年代が上がるごとに9月のほうが感染者数が増えています。

報道では高齢者の重症化事例もありましたが、高齢者の方ほど感染対策への意識が高まったのでしょうか。

 

続いては東京都の年代別人口に占める新規陽性者の比率です。

<図7 東京都 年代別人口に占める新規陽性者数の比率>

f:id:kitchenobake:20201028112247p:plain

折れ線グラフが東京都の年代別人口に占める新規陽性患者の比率です。年代別人口に占める新規陽性者比率は右軸をご覧ください。

まず4月時点では(感染者数の少ない10代を除き)各世代とも新規陽性者数は0.03%近くでした。9月になると50代を境に50代より若い世代は新規陽性者比率が上がり、50代より上の世代は逆に新規陽性者比率が下がっています。

特に20代では9月の20代人口に占める新規陽性患者発表数が0.06%まで上昇しました。

 

20代は大学生から社会人まで多様な属性を含む年代です。なぜ20代だけ新規陽性患者数の増加がみられるのでしょうか。20代が感染対策を怠っているのでしょうか。持ち込まれた検体を年代別にみて陽性率を調べる必要があると思いました(20代30代の検体が多く検査されている可能性もあるため)。

 

少なくとも私はCovid-19を恐れており、この一年は外食にも会合にも参加していません。基本的にはしばらくこの対策を続けていこうと考えています。20代は陽性比率がほかの年代に比べて高いということは、同世代の友人と遊んだ場合、他の世代の方と過ごすより感染する可能性も上がりそうです。中には無症状患者も多い、という報道もあります。

生活が壊れるほど過度に恐れることはしたくないですが適切な距離はとり続けていこうと思います。

 

気になったことメモ

・重症患者数

問題は新規陽性患者数よりも重症患者数だ!という主張をよく耳にします。軽傷でも後遺症が残る可能性があるので何より罹患しないことが大切だと思うのですが、確かに重症患者の数も調べてみたいです。こちらは東京都のデータで簡単に推移を調べられます。

またYahoo!のサイトでは現在の感染者数(新規患者数ではない)もグラフ化してくれています。

hazard.yahoo.co.jp

 

・検体の陽性比率

持ち込まれた検体の陽性比率は世代間で異なるのか?

・東京都年代別人口比率

東京都の年代別人口は比較的綺麗に分散している印象を受けました。地方は高齢化が進んでいるという話もありますが、実際のところどうなのでしょう。

また23区内でも年代の差はあるのでしょうか。子育て世代が多くて平均年齢が若い区や、セカンドライフを楽しむ方が多く平均年齢が高い区はあるのでしょうか。

20代30代向けファッション誌の分析 印刷部数からみる未来

20代女性向けの月刊ファッション雑誌「JJ」が月刊発行の終了を発表しました。 

news.yahoo.co.jp

 

赤文字系雑誌に大学生時代非常にお世話になった身としてはとても残念であるとともに、現在購入している雑誌ももしかしたら近い将来同じような状況になってしまうのでは…という不安から気になる雑誌の印刷部数を調べてみます。

まずはJJが属する女子大生OL(20代)向け雑誌グループの印刷部数の推移を確認し、JJの最近の状況を印刷部数から確認します。次に、現在愛読している雑誌が属する30代向け雑誌グループの印刷部数の状況を確認し、最後に小学館の「Oggi」が休刊にならないことを願いながら小学館の30代向け女性向けファッション誌の状況を確認します。

 

 

・データについて

一般社団法人日本雑誌協会がwebサイトで公開している「印刷部数」を利用。印刷部数とは算定期間(3か月間)の平均印刷部数であり、年間4回公表される。

<2008年4月~2018年9月のデータ>

https://www.j-magazine.or.jp/user/printed/

<それ以降のデータ>

https://www.j-magazine.or.jp/user/printed2

 

20代向け「赤文字系雑誌」の印刷部数

JJの毎月発刊中止は驚きでした。主観ですがJJといえばCanCam,ViViと並ぶ主要赤文字系ファッション誌だと思っていました。あんなに勢いがあったのにという驚きを隠せないのですが、まずは女子大生~入社数年の若いOLをターゲットとしているファッション誌の印刷部数推移を見てみます。

<図1 20代向けファッション誌印刷部数>

f:id:kitchenobake:20201026064732p:plain

データが公表されている2008年以降若干の盛り返しはあるものの、基本的に印刷部数は減少の一途をたどっています。2008年4月期(2008年4月~6月の平均印刷部数)には約26万部の印刷部数があったJJは直近の2020年4月期にはなんと約4.5万部まで印刷部数を落としております。しかしこれはJJに限った話ではなく、20代向けの主要ファッション誌はいずれも似たような傾向が見て取れます。小学館Cancamは2008年4月期には約55万部の印刷部数があり、上図のグラフでも印刷部数としては1位を誇っています。ただし、その後印刷部数は急落し直近の印刷部数は約5.5万部と1/10の規模となっています。

2010年代前半までは各誌発行部数に開きがありましたが、直近ではいずれも10万部を切る状況となっています。この背景には電子書籍の普及などもあり、純粋に雑誌の印刷数だけではその雑誌の影響力を考えることはできませんが、少なくとも過去10年で「紙媒体の雑誌」はあまり読まれなくなってきているということが言えそうです。電子版のダウンロード数なども見てみたかったのですがデータが見つかりませんでした…。

 

直近の数字をもう少し見てみます。

<図2 20代向けファッション誌2019年以降の印刷部数>

f:id:kitchenobake:20201026072017p:plain

確かに3誌の中ではJJの印刷部数が少ないですが、CanCamも似たような傾向があります。ViViは印刷部数の減少もなだらかといえそうです。

個人的には大学生時代のバイブルCanCamが同じ運命をたどってしまうのはとても悲しいです。CanCamのお気に入りの号を抱えて上京し、素敵な大学生活にあこがれたあの時の自分がこの状況を知ったら青ざめるかもしれません…。

 

 

続いて印刷部数の前年同期比もグラフで見てみます。前年同期比0(変化なし)ラインは黒い太線を引いています。この線より上にバーが伸びていれば発刊部数が増えたことを意味します。

<図3 印刷部数前年同期比(絶対数)>

f:id:kitchenobake:20201026065431p:plain

 

図の通りですが前年同期比で見た際には2000年代の減少幅が最も大きく(印刷部数が多かったためですが)、最近は毎年徐々に印刷部数が減ってきていたものの今年の4月期にまた減少幅が大きくなってしまったようです。2020年は外出自粛の影響などもありファッションの優先度が下がった人が多かったのでしょうか。自身の生活を振り返ってみても外出自粛の影響で特に服を新調しても着ていく場所がなく、夏服は1枚も買いませんでした。

 

 

減少幅を見たところで、これだけでは当然のことしか言っていないので前年同期比に対する印刷部数の増減比率グラフも示します。

<図4 印刷部数前年同期比(増減比率)>

f:id:kitchenobake:20201026065443p:plain

こうしてみると2010年代後半は減少比率が高まっている気がします。特に2020年4月期は2019年4月期と比べても減少比率が大きく出ています。

ただし、ViViについては他の2誌ほど減少比率は目立っておらず、CanCamもまちまちといったところでしょうか。小学館ファンとしてはCanCamの来期の回復を願っています。

 

 

30代向け向けファッション誌の印刷部数

続いて、女子大生~OL向けの雑誌から1つ世代の上がった30代女性向けのファッション誌の状況です。個人的には現在自分が買っている雑誌の未来に興味があります。かつてCanCamの読者であった私は、大学生の後半から社会人になりたての頃、CanCamのお姉さん雑誌AneCanという雑誌を愛読していました。社会人になって自由に使えるお金が増えたらこんな服や靴を買うんだ…と胸をときめかせながら雑誌を何度も読み返しました。付箋をはったり切り抜きを作ったりとお気に入りのファッションを見るのが大きな楽しみでした。しかしAneCanは私がちょうど社会人生活を楽しもうとしていた時に休刊になってしまったのです。毎月の楽しみも無くなり、そのショックはかなり大きいものでした。できれば(不謹慎ながら)心の準備はしておきたい…というのが本音です。

 

<図5 30代女性向け雑誌の推移>

f:id:kitchenobake:20201026065458p:plain

※参考のため水色の点線で20代向け雑誌のCanCamの印刷部数を表示しています。

 

まず30代向けの雑誌にいえることは、いずれも印刷部数は減少傾向にあるものの、その減少速度は20代の女子大生などを対象とした雑誌に比べ緩やかであるということです。

20代女性の間では一時ファッション誌が流行しましたが、今は雑誌ではなく別の媒体でファッションを検索したり学んだりすることが一般化したのでしょうか。個人の意見ですが、働くようになってからは自分好みのスタイリングをするスタイリストやモデルをネットの海から探す気力がなくなり、1冊買えばある程度の着こなしを提案してくれるファッション誌に頼るようになった気がします。

 

希望的観測ですが、20代向けファッション誌より減少比率が少ない30代向けファッション誌はしばらく休刊廃刊なく続くのではないでしょうか。

 

また先のJJの発行元でもある光文社のCLASSY.は30代向け女性ファッション誌の中でも特異な動きを見せています。軒並み他紙が印刷部数を落とす中、2014年から一時期印刷部数が増えているのです。この期間CLASSY.の読者でなかったので詳細は分かりませんが、付録など雑誌購買ならでの特典がファンを増やしたのでしょうか。いずれにせよ他にはない特徴です。

<図6 光文社2誌の推移> 

f:id:kitchenobake:20201026065511p:plain

 小学館の女性向けファッション誌の状況

さて、ここからは私が現在購入している「Oggi」を発刊する小学館のファッション誌3誌についてです。

小学館にはかつてアラサー向けのファッション誌が3誌ありました。読者の勝手なイメージですが、3誌のイメージ像はこんな感じだと思います。

 

AneCanCanCam卒業生用。カワイイが好きだけれどいつまでも大学生向けの服を着ているわけにはいかない。お姉さん服も着たいけどモテも捨てずにコンサバカワイイが必須。キラキラしたい独身女性向け。

Oggi:綺麗な服を着たいけれど、カワイイ全振りはしない。コンサバかつ「仕事できる」風のファッションが多め。明らかに男性受けしない服もちらほら。カチッとバサッとベーシックな服がテーマで自立したい女性向け。

Domani:ターゲット層は比較的広め。毎月発刊をやめたタイミングでターゲットが大きく変わった印象(ママ向けシフト?)。Oggiとターゲットが似ているものの、所得はOggiよりもやや低めで着回しや高見えする服の企画もちらほらあった記憶が。最近は完全にターゲットから外れているので読んでおらず、もしかしたら内容が変わっているかも。

 

3誌のターゲット層は異なるもののターゲットの年齢は近く、読者でも迷うことが多かったのではないでしょうか。

20代向けファッション誌よりは減少比率が緩やかといっても30代向けファッション誌も印刷部数が爆発的に伸びている状況ではありませんでした。AneCanは毎月発刊を2016年11月号でやめ、休刊となりました。

 

さて小学館の3誌の印刷部数の動向を見ます。

<図7 小学館発行の30代向けファッション誌の印刷部数>

f:id:kitchenobake:20201026065525p:plain

現在DomaniはAneCanが休刊した時の印刷部数を下回る結果となっています。DomaniもOggiも緩やかに減少は続いていますがその減少速度はAneCanよりも緩やかです。

 

続いて印刷部数を前期比との比較で見てみます。

<図8 印刷部数 前期との比較>

f:id:kitchenobake:20201026065540p:plain

0であれば前期から変化なし、黒い線より上にバーが伸びていれば前期より印刷部数が増えたことを意味しています。横ばいの傾向が続く30代ファッション誌は各誌まちまち…といった結果です。

 

しかしやはりファッション誌には季節性があると思うのです。例えば夏服はあまり興味ないけれどコートが気になる秋服は雑誌を買いたい!というように。このような意図から20代ファッション誌と同じく前年同期比の印刷部数変化もグラフにしています。

<図9 印刷部数 前年同期比>

f:id:kitchenobake:20201026065552p:plain

こうしてみるとやはり黄色のAneCanの減少が目立ちます。一時2013年ころは持ち直したものの以降は歯止めがかからず…といったところでしょうか。このグラフを見ると、休刊もやむを得ず、といった判断があったのかもしれません。

同じ目線で見てみると、Oggiは当時のAneCanほどは前年同期比で数字を落としていないことがわかります(ほっ)。

 

さらに小学館はDomaniの毎月発刊をやめており、(おそらく)Domaniのターゲット層をOggiよりやや上、または働く母に変更しました。これにより小学館内でもすみわけができ、読者の取り合いがなくなったと思われます。

減少比率も緩やか、出版社内のすみわけ整理もついた…ということはOggiはこのまま継続、またターゲットもこのままの姿勢を続けてくれるでしょうか(続けてほしいです)。

そんな希望を持ちながら次の号を楽しみにしたいと思います。

 

さらに気になったこと

・ターゲット人口当たりの印刷部数

日本人人口の減少に伴い、ターゲットとなる女性人口も減少していると考えられる。雑誌のように1人1冊で十分に需要が満たされる商品の場合は人口減少に比例して供給数も減少しているのだろうか。アパレルや化粧品で検討してみたい。

 

・ターゲット年代別の印刷部数

今回はごく限られた雑誌しか取り上げなかったが、小学生向け、中学生向け、高校生向けの雑誌の推移も調べたい。JJに代表される20代向けの雑誌が目立って印刷部数が急落しているのか、それとも全世代で同じようなことが起こっているのか。

 

・電子版の普及

印刷物だけでなく、電子版のダウンロードの考える必要がある。特にOggiはAmazonPrime特典として無料で電子版を閲覧することができる。電子版のダウンロード数を知ることができれば比較してみたい。もはや雑誌の主戦場自体が印刷された紙ではなく電子版に移っている可能性もある。