つきなみレポート

統計とグラフで知る社会と日常のこと。

若い世代はお酒を飲まない-飲み会コミュニケーションはもう通用しない?

デートでお酒が入っていい雰囲気に。社会人は上司との飲み会で親睦を深める…。こんな考え方はもはや一般的ではなくなってきているかもしれません。コロナ禍で飲み会が無くなるその前から、飲酒をきっかけとしたコミュニケーションというのは難しくなっていたのではないでしょうか。政府統計より、国民の飲酒状況についてのデータをグラフ化していこうと思います。

 

<結論>

・そもそもお酒を飲めない人が3割。

・男性の4割、女性の6割で日常的に飲酒習慣が無い可能性。

・20代は日常的な飲酒習慣がない人が多く、週5日以上飲んでいる人たちは20代では5%と少数派。

 

 

飲酒の状況-男女の比較

日本人はお酒が飲めない体質の方も多い、というのは広く認知されてきている話です。まずはお酒を飲めないと回答した比率を男女別・年代別に見てみます。

<図 飲まない(飲めない)と回答した比率(男女年代別)>

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 20~24歳の男性の24%が、女性の37%がお酒を飲めないと回答した、とグラフを読みます。まずグラフを見て思うことは、飲めない方の比率が結構高い、ということではないでしょうか。50代以下で見ると、男性は約2割、女性は約4割がお酒を飲めないと回答しています。

 女性のほうがお酒を飲めないと回答した比率は高くなります。社会人が多い25~59歳では、約4割の女性がお酒を飲めないようです。もはや飲めないことは全く普通の事象といっていいでしょう。(適当ですが)日常的にカップラーメンを食べている比率と似ているかもしれません。男性も約2割がお酒を飲めないと回答しています。30名の部署であれば6名程度は飲めない方がいらっしゃるということです。

 

 続いては、飲めない方に加えて、飲めるけれどもほとんど飲まないと回答した方の合計グラフです。

<図 ほとんど飲まない、または飲まない(飲めない)と回答した比率>

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50代以下の平均では、実に男性の4割、女性の6割において日常的に飲酒習慣が無いと回答しています。特に若い世代ほど飲酒習慣が無い方が多く、20代は男性の5割、女性の6割に飲酒習慣がありません。つまり20代は半数以上に日常的な飲酒習慣がありません。

 

こうしてみると新人歓迎会や部署異動や送別会等、会社の行事で当然のように飲み会が選択されるのは不思議な気がします。毎回とは言わないまでもたまにはランチでノンアル開催があってもいいなと思います。

そして自分がもしアルコール飲料メーカーの商品開発担当者だったら…と考えてしまいます。時代の潮流かノンアル市場開拓が進んでいる背景はここにあるのかもしれません。

 

ところでほとんど飲まない=飲めるけれども敢えて飲まない、と回答した比率が高い世代はあるのでしょうか。

<図 ほとんど飲まないと回答した比率(男女年代別)>

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飲めるけども日常的には飲まないと回答した比率は特に20代で高いことがわかります。女性は20代より上の世代を見てもあまり大きな変化がなく、生活スタイルに飲酒を組み込まない層が2割程度存在し続けます。一方で男性の「飲めるけれども飲まない」比率は年代とともに若干低下していきます。お酒が趣味になってくる方も増えてくるのでしょうか。

アルコール飲料メーカーの気持ちになってみると、新規ターゲットとするのはこの「飲めるけれども飲まない」層でしょうか。ただいかんせん母数が少ないので、ノンアル市場に注力したほうがいいのかもしれません。

 

20代を中心にお酒離れが進む中、「毎日飲む」と回答した方の比率はどうでしょうか。

<図 毎日飲むと回答した比率(男女年代別)>

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20代では男女差はほとんど見られません。30代以降、「毎日飲む」と回答した男性の比率は増加傾向にありますが、女性は横ばい傾向です。年代が上がっていくにつれて男女の差は鮮明になります。男性は60代では約4割が毎日飲むと回答しています。男性には妊娠~授乳期など飲酒ができない期間がないので、男女の差が一定数開くのは不思議なことではありません。

またライフステージが変わる方が多いと想定される60代以降、「毎日飲む」と回答した男性の比率は若干の増加を見せる一方で女性は若干減少しています。

 

男性

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女性

 

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飲酒の状況-年代の差

まずは全体の状況を見てみます。要素を集約すると傾向が強く出てきます。

<図>

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 全世代でお酒を飲めないと回答した比率が最多です。ほとんど飲まない人も多く、約2割を占めるため、日常的に飲酒しない方は約半数に上ります。

 一方で週7~5日と高頻度で飲酒をすると回答した比率は20代では少数派ですが50~60代では約3割で年代とともに上昇する傾向にあります。

 

若い人は日常的にお酒を飲まない現状が明らかです。敢えて飲まない(=ほとんど飲まない)方も他の世代に比べると多いです。特に週5日以上飲んでいる人たちは20代では5%にとどまりますので少数派と考えたほうがいいでしょう。 

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男女間、年代間で飲酒の状況に差があることが分かった今、会社における状況を少しだけ想像してみます。

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 50代前半の男性上司のもとに20代後半の部下が付いたとします。

50代前半の男性は31%が毎日飲酒しています。週1回は飲酒する割合は58%です。自分の飲酒経験も相まって半数以上が「飲酒は普通のこと」と考えている可能性が高いでしょう。

ところが20代の部下たちの行動は全く違うことが想定されます。20代後半の女性は44%がお酒を飲めず、男性も24%がお酒を飲めません。

この場合、特に男性上司と女性部下の間で飲酒に対する考え方がずれている可能性が高く、上司がねぎらいのつもりで誘った飲み会が部下にとっては負担になるケースがあります。お酒が飲めない方が半数もいる世代なのです。ありがたいけれど困ったなと部下に思われるケースは決して少なくはないでしょう。

 

 事前にお酒が飲めるかどうかという調査をしなければ、下手をするとパワハラアルハラになりえます。「今日はちょっと頑張ったし飲みに行くか!」という誘いはコロナ禍後も別の意味で慎重になるべきかもしれません。

 

<表 飲酒の状況 総計> 

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<データ>

e-Stat

国民生活基礎調査/令和元年国民生活基礎調査/健康/全国編/年次

 

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450061&tstat=000001141126&cycle=7&tclass1=000001141142&tclass2=000001142126